マスターが送ってくれた、コーヒーを淹れるのに使う器具、ついに届きました。
どきどきよりも、わくわくよりも先に、箱を開けた。感情よりも頑丈で具体的な行動力が、ぼくの心を特別に表現している。
箱からひとつずつ取り出した、「これこれ、見たことあるね、うんうん、これね。」と、見たことのある器具が我が家にやってきたこと、まずそれが嬉しかった。
なにかのタイミングで、と思って、まだあたためていることがある。
コーヒーを淹れること、ぼくの中であたたまったまま、でも、確実になにかのタイミングを待っていた、それが今だったんだと気づけたとき、待ちくたびれていた時間たちがいっせいに、色を思い出したように明るく光りました。「なにかのタイミング」が、いまこの瞬間でよかったなあ、そう思えるようないまが、ぼくを離さなかった。
ご縁に恵んでもらえたことで湧きあがってきたきっかけを、ただただしあわせに思いました、そして、そんな気持ちに絡みつくように、袋から漏れたコーヒー豆の香りが、やさしく苦かった。
床に並んだひと通りの器具を眺めながら、もうすでにぼくは、ちょっとかっこよくなっていたと思う、満たされていた、顔はちょっぴり、にやけていたと思う。
文と絵 山本こう太