こう太のコーヒーとか

3 コーヒーの音がするよ

瓶のふたをあけたら今日もコーヒー豆の香りがします、それはまだ豆の香りで、口にすぐ運びたくなるようなものではなく、脳みそをとんとんってするみたいな香り、さあこれから休憩だよ、と。

それから豆をミルでごりごりするんだ。
てゆうか、何かをごりごりする機会なんかないので、ごりごり自体がもう愛おしいよ、なんですかあの時間は。
確実に力仕事だし、筋肉も神経も使っているからか、わりと、何も考えていません、無ですね、でも音も香りも飛び込んでくるから、脳みそはとっくにコーヒーに向かってるよね、虜に、なってるよね。

3 コーヒーの音がするよ あとはドリップ、こぽこぽこぽってします、あー誰かにこの瞬間を覗き見されたいぜ、とか思いながらこぽこぽします、誰も覗いてくれません、こぽこぽします。
必死にごりごりしてたときとは真逆、じぶんにうっとりしながら、これからどんな風に生きよっかなーとか考えてる、なんとなくこの瞬間なら、世界に、じぶんに、素直になれるような気がする。
でもやっぱり背伸びをしてるよ、そんなこと考えるなんて、なまいきだ。でも、健全で無邪気な背伸び、それが許される時間が、こぽこぽなんだなあ。

そんなこんなで美味しいです。そんなこんなのなかに詰まった過程ひとつひとつが、ばらばらに、でもつながっていて、このひとときが生まれる感じ、ああ、至福。

文と絵 山本こう太

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