こう太のコーヒーとか

10 ナマモノです

マスターから送られてくるコーヒー豆、宅配物の内容の欄に「ナマモノ」といつも記載されています。海からあげられたばかりの魚のように、焙煎したてのコーヒー豆はナマモノ、生鮮食品なんだね。

ぴちぴちの魚を切り開いて、綺麗な身をお皿に盛りつけて、はい、ナマモノです、というイメージが濃すぎるあまり、ころころっと乾いた茶色の粒を見たところで素直に、わあナマモノだ!って思えなかった。
熱に転がされたあとのコーヒー豆よりも、きらきら光る魚のほうが、どう考えても、鮮やかな生命を感じさせてくれる。

10 ナマモノです 滅んでいく何かを見て、生命の鮮やかさに触れれるよね。
魚たちが簡単に輝きを失っていく姿がぼくにとってあたりまえなように、マスターは、焙煎したてのコーヒー豆の輝きを知っていて、それを失ってしまう悲しさを知っていて、だからこそ、ナマモノとして扱うことができるんだろうなあと思います。

見た目の話だけではないぶん、想像もむずかしいし、その輝きの内容が味のことなんだとしたら、そもそもその輝きにすら気付けていないのかもしれないです、ぼく。
それでも「ナマモノ」が届くんだ。新鮮なうちにいただかないといけないんだ。
そうやって導かれるようにだんだん、違いのわかるかっこいい大人になれる気がしてたまらない。
ほんとうに幸せなかぎりです。

文と絵 山本こう太

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