こう太のコーヒーとか

24 好きとため息

きみのその好きという感覚でさえ、千切るように、ほどくように、ときに砕くように因数分解してしまえば、実はただの単なる、めんどくさいとかモテたいとか、そんなため息のような言葉に還ってきたりするものなのかもしれない。

例えばここが無人島だとして、僕はいつものようにコーヒーを飲むのかな、誰も見てくれない砂浜の真ん中で。
そうやって、好きだという叫びに逆らうように自問自答を繰り返していると、案外ほんとうはただ誰かに良く見られたかっただけの身体が見つかってしまう。
誰かに良く思われたい、みたいな僕の心は、月あかりに照らされながらもっと、寂しい温度になる。
何かを握りしめていたい、好きという感覚は僕の核心に直接つながっている気がする。
好きになっていく過程で僕たちは、元の人間にまた戻っていくような儚さを覚えるんだ。

24 好きとため息 何かを好きになるたび、震え始める心臓を感じるのはすこし怖い。
生きているということを正面から眺めているみたいで怖いよ、僕はため息を吐きだす。

ねむい。お腹すいた。寂しい。ねむい。
それはきっと命の音だ。
覆うように、包むように、僕は今日も、好きだと言う。

文と絵 山本こう太

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