こう太のコーヒーとか

27 この味なんの味

味わうって、どうやってすればいいんだろう。どこをどう動かすことで僕は、それを味わうことができるんだろうね。
甘いとか苦いとかの先、広がる味の世界に触れてみたくて、舌の上でチョコレートを転がしている。
ああ、甘い。

27 この味なんの味 そこにある、とされているものが自分には見えない場合、まず、言葉を知らないということが原因になってしまっているかもしれない。
爽やか、華やか、すっきり、深い、弾ける、とか、味を形容するたくさんの言葉が存在するけれど、僕は、その言葉の意味を知らないままだ。
爽やかってどういう感覚のことを指しているのか、弾けるってどういう感触のことを指しているのか、わからない。
だからまったく見えなかった、というよりも知らないものだからつい、素通りしてしまっているのかもしれない、本当はそこらじゅうに転がっていたであろうたくさんの味を。

言葉は記憶の集合体だ。自分の扱う言葉には自分だけの思い出がたくさん詰まっている。
甘いなあって思えるのは、チョコレートとかをたくさん食べた思い出があるからだ。
爽やかな味わいだ!って思うには、そんな味わいをまず経験しなければならない、つまり、「食べてごらん、一口目のこのパッと広がるこれが爽やかな味わいなんだよ!」と、誰かに経験させてもらう必要があるかもしれない。
あるいは、自分だけの感性に紐つけて、「なんて爽やかな味わいなんだ!」と勝手に、言葉と感性を結んでしまったって、面白いんじゃないかなと思う。

文と絵 山本こう太

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