こう太のコーヒーとか

15 さみしさとコーヒーと

口元がさみしくなる、とかゆう理由だけでコーヒーを淹れることが増えた。
喉が渇いたわけでも、休憩をはさもうというわけでもない、たださみしい。そんな曖昧な理由はあってもなくても同じかもしれないね、それでも言うよ、さみしいから、と。

唇を湿らせたいのか、喉に液体を落としたいのか、それとも本当にさみしいのは指先で、なにかにもじもじと触れていたいのか。
わからない。僕は一体どうしてしまって、なにに向かって手を伸ばしているのかわからないよ、さみしいってたぶん、そういうことなんだと思う。
得体の知れない感情だ。
15 さみしさとコーヒーと もしかすると、案外、なんでもいいのかもしれない、なんてことも思ってしまう。
この空虚は、なにででも埋めてしまえるような気さえしてしまうよ。

それでも僕はコーヒーを淹れるんだ、コーヒーが飲みたい。
これは錯覚なのか。コーヒーじゃないといけないような、ひとつぶの錯覚があって、それを確信に変えたくて、もっと強く、もっと堅く結んでいきたくて僕はまた、コーヒーを飲むんだろうな。
そうやって、掴みどころのないさみしさとやらに、向き合っていくんだ。

冬が近づいてくる。みんな、寒そうだね。

文と絵 山本こう太

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