こう太のコーヒーとか

91 もうすこしだけ。

眠ってしまった体にも、まだ、意識のようなものが残っていて、僕は時々、僕ではないだれかと会話をするように、独りごとを言う。
きょう見たテレビの話、昔好きだった女の子の話、行ってみたい国の話とか。
寝て起きて、またこの場所からはじまる命ですが、きのうは眠った気がしなかった。ただ日が沈み、のぼり、身勝手になろうとする僕に、それでも、おやすみを告げる。

感受性は、どう頑張っても磨くことができないから、大雑把に、世界を愛することにしました。
他人同士の出会いも別れも、一日中ずっと見ていられる。きょうは再放送のドラマを見て、泣いた。心のなかで、泣いた。
綺麗だなあ、というのは感想でもなんでもない。夢のなかに居る時間。

91 もうすこしだけ。 かんがえることで、努力をし続けることで、じぶんのためになるのなら。
この明かりが消えても、朝が来ればべつに、こわくないのだから。
眠っていたはずの体の中に、もうひとりの僕がいてくれたこと。それは朝日にもよく似ていたと思う。
でたらめに生きた証は、ここにも、そこにもあります。もうすこしだけ、横になっていたい。もうすこしだけこうしたまま、明日や明後日について、思っていたい。
しずかすぎる部屋の底で、もうすこしだけ。

文:山本こう太 絵:kaori

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