こう太のコーヒーとか

17 誰かにとっての詩

「熱い湯気はしずか、それは記憶、大切にしまいこまれていた思い出に触れようと手をのばすように、湯気を吸い込んだ。まだ冬でもない、これからなにに感動するのか、なにも知らないままここに居続ける、落ち着くには誰かの炎が必要なのだと思って、求められたかっただけの塊、ぼくの身体の中はまだ、煙たい。」

17 誰かにとっての詩 という詩をいま書いてしまったので、そのまま載せることにします。
生成される前の言葉には、意味よりも濃い呼吸が含まれているような気がする。こぼれてしまったため息の温度みたいなもので、それを発音してしまうことで大切ななにかが削ぎ落とされてしまうような感覚です、伝えるという意識を放棄してこぼれ落ちた言葉は時に、コミュニケーションの仕組みを飛び越えて、誰かに何かを突き刺す。僕は、そういうのを期待して書き続けています、何かを、突き刺したい。

冒頭の詩は、コーヒーを飲みながらこの原稿に取り掛かろうとパソコンに向かって何やらを打ち始めて、完成したものです。誰かに何かを伝えるための言葉ではないし、共感される余地もないような言葉。
それでも誰かの中で再生された時、それぞれの人生で経験した日本語が記憶と結びつけばいい。
誰かにとっては優しい言葉でありたいと同時に、また違う誰かにとっては悲しい言葉でありたい。

文と絵 山本こう太

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