こう太のコーヒーとか

37 飛ぶ。

「飛」という漢字がいつまでたっても苦手だからといって、別になんの問題もなかった。
なので、苦手はそのまま。変な方向に払っていたり、余分な線が増えたり。

「飛」に似た字がない。
個性的というか、ちょっと、ルールからはみでたみたいな形をしている。
だいたいのややこしい漢字がややこしい理由は、似た漢字が多すぎるから。
さらには、意味まで近かったりするので、いちいち、ちまちまと覚えていくのが面倒。人べんか木へんかを間違うのと、「飛」が書けないままなのは、ぜんっぜん別のお話で。

類せないようなものとの付き合いは楽。
人でも物でも、漢字でも。だって、近しいものがないぶん、例がないし、それをそのまま「個」として接することができるから、余計なことを考えなくて済む。
こいつはちょっと特別なやつ、とそんな認識ひとつで、なんともうまく付き合えるのだ。
逆に、何かに類そう類そうと忙しそうにしているやつは、限られた箇所だけでしか個性を出せない。
女子高生が制服のスカートの丈を短くしたり、早めにセーターを着たりと同じようなことで、細かな違いを精一杯に個性と言い張られても、困ってしまうような。

世界には世界のルールがあるけれど、それは世界に類しているからこそのルールであって、「飛」みたいなやつからしたら、俺は俺、でしかないし、ルールは俺、なのだなあと思う。
37 飛ぶ。 こんなこと書いたのは、今日また、この漢字を間違えてしまったから。
線が1本多かったけれど、元気よく飛んでったよ。

文と絵 山本こう太

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