こう太のコーヒーとか

49 そういう孤独を、淹れたい。

勝手に、身勝手に、時間が流れ続けてしまうせいで、ぼくたちの身体もまた、止まることができない。 1秒でも、なにもしない時間はあっただろうか。
なにをするか、それだけを選び抜いて終わる毎日、はじまる毎日。
時間の渓流についていこうと、身体は必死だ、心は、もっともっと必死だ。
見えないなにかを見るために目をこらしていては、置き去りにされる、ひとりぼっちはいやだ、と、ひとは止まらない。

ひとりぼっちはいやですか?
見えないなにか、ってそれはほとんど、じぶんの本当の声のことだ。
だから毎日を重ねて重ねて、じぶんのことが、わからなくなってゆく、そうやって時間に、世界に、収まってゆく。じぶんを忘れてゆく、歳を取ってゆく。
そういう未来を知っていて、吸いこまれてゆくのは怖くて暗い。
ぼくは立ち止まって、じぶんの声を知りたい、じぶんを見てみたい、ひとりぼっちになりたい。49 そういう孤独を、淹れたい。

独りになったひとは、思っている以上に暗闇だ。広くて深い黒だ。
宇宙に空いてしまった穴のような孤独のことを、ぼくは信じている、そういうものを淹れることができるひとに、ぼくはなりたい。

文と絵 山本こう太

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