こう太のコーヒーとか

54 夏が光るから。

あきらかに、夜が涼しい。
夏を過ごし終えると、いつも、なんとか生き延びたぞ、という気持ちになる。
太陽があんなに近くで燃えて、光って、負けじとじぶんも燃えて、光って。
ところで、ひとはなにかと光るものが好きだ。
花火、ほたる、星空も夜景も。
だからきらきらと明るいエネルギーがこぼれてみえるほどの、輝く人間のことも、かんたんに好きになってしまう。
見ていると、じぶんの気持ちまで、白く照らされ、満たされていくような。

夏、どんどんと薄着になっていく過程で、みんな元の姿に近づいてゆく。
死なないために生きている、という無意識の光が、膨張して、きらめく肌からあふれだす。生命の鼓動。
生きなければ死んでしまう。ぼくたちが動物であることを思い出す。
寂しくて吠える。がむしゃらに季節を走り抜ける。

54 夏が光るから。 記憶のなかにあるすべての夏はいつも、おなじような表情でおなじような未来を見つめていた気がする。
もう、さっきまでの夏が、思い出だ。
光が光のまま思い出になるから、ふとしたときに思い出したくなる。あの光に、触れたくて。
次の季節がもう、そこにあるね。

文と絵 山本こう太

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