こう太のコーヒーとか

55 月が綺麗だった。

好きになれるような自分ならたくさんいるのに、自分よりも外にある誰かのことをなかなか好きになれず、結局いつも、ひとりでいるような気持ちばかりがつい、心地よくなる。

夜はとくに独りな気がして、自分の存在だけがくっきりと灯る。
きみは、ぼくは、と自分のなかを反射する言葉、どうしようもない暗闇で、自分以外のものを信用できない、そのまま眠って起きたら、朝は朝でまだ、なにもかもがぼやけている。
一杯のコーヒーを淹れるのに5分くらい。
ここが未来なのか、過去なのか、わからない。ぼくはぼくを見つめるけれど、それが誰なのか、本当はわかっていない気がする。

55 月が綺麗だった。 遠くのほうで、月が綺麗だった。
なにかを感じる時、それが自分だけの特別な感覚のように思えるから、きっと、ぼくは生きている。
自分の瞳のなかだけで光る月を。自分を。ちゃんと好きになる。

文と絵 山本こう太

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