コーヒーを淹れて飲む、という所作は、いつのまにかぼくの生活であるし、朝おきてご飯を食べてコーヒーを淹れて、飲んで、一日というものがゆっくり完成していく。
美味しく飲めれば、良いのだけれど、それ以上に大切なことは、ぼくの生活を決して、コーヒーが追い越してしまわないように、ということであります。
だんだん、コーヒーを淹れるのに、構えなくなってきた。
高く見上げることもなく、ていねいにていねいに扱うこともなく、だ。
ご飯を食べたあと、ひと息つくまえに豆を挽く。
もとからあった生活と生活のあいだにコーヒーを飲む時間がはさみこまれて、また、自然な生活がうまれる。
こうして一日は、気持よく、ぼくの呼吸に沿って流れてゆくから心地よいね。
コーヒーを飲みながら、ひと息つく。
ほんとうはため息だったかもしれないその息が、この時間とともにじんわりと、やさしさに包まれていくようだ。
きょうもあしたも、やさしくありたいな。
文と絵 山本こう太