こう太のコーヒーとか

66 とある冬の日の朝

朝早くに触る水が冷たくて冷たくて、冬のことがいっそう嫌いになる。
いそいでコーヒーを淹れようとしますが、ミルも豆を入れている瓶もポットも空気も、肌にあたるぜんぶが冬だ、できるだけはやく熱いかたまりを身体のなかに落としてあげたい。
いっそのこと沸かしたお湯をそのままいただいてやろうかとも思うけれど、ただの熱をのみこんだところでぬくもりはたぶん手に入らないんだろうな、さっきコーヒーのことを熱のかたまりと呼んでごめんなさい、と思った。やっぱりコーヒーがのみたいのです。

ストーブよりもエアコンが好き。身体のなかを出入りする空気ごと、部屋ごとあたためれば、ここが冬だということを忘れてしまえるから、こころがほっと落ち着く。
熱々のコーヒーをすすりながら、本当はまだ寒い、じわじわとぬくめられていく体温がわかった。

66 とある冬の日の朝 屁理屈を言いたいわけではなくて、寒い冬のことが嫌い嫌い、と言える冬のことが好きだ。
嫌よ嫌よも好きのうち、ですね、今年も鬱陶しい冬がはじまります。

文と絵 山本こう太

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