こう太のコーヒーとか

34 美味しさの中に

美味しい、という言葉を放棄したとたんに、本来ずっとそこにあったはずのいろんな感覚が、溢れるように言葉になった。

美味しいかどうかというのは案外、結果論でしかない。
結果がすべてだと言い切ってしまいたい気持ちだってたしかにあるけれど、それでも、その結果を作り出した過程のことが気になるのもまた当たり前。
受け渡された結果を結果のままにしていたら、実はその中に丁寧に包まれていたたくさんの過程に気付くことはできないね。
そうやって、結果以外のものに鈍感になればなるほど、美味しい、美味しくない、みたいな言葉しか口にできなくなってくる。それはすこし寂しい。
本当は、今日飲んだこのコーヒーにだって小さな酸味を感じているのに、美味しいとしか言えないのは寂しい。
だから、美味しいかどうかという結果は、一旦ここで、放棄してみようって思ったのだ。その中にある、大切なひと粒ひと粒にちゃんと出逢ってみたくて。

34 美味しさの中に 酸味も苦味も甘みも、香りも、濃さも軽さも、こんなに近くにあったんだね。
美味しいという言葉のベールをひとつずつ丁寧に剥がしながら、また一からコーヒーと出逢っていけるのか、と思ったら楽しみで仕方がありません。
ここからまたひとつ、かっこよくなれそうな気がして、もうすでにわくわくです。
それでは、またね。

文と絵 山本こう太

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