こう太のコーヒーとか

53 特別はいらないよ。

気付くと、かたくかたくなってしまっている心がきらいだ、平穏な日々がほしいし、たまに息継ぎができるようなものでなくて、ちゃんと、陸に姿を残しながら安心感のある呼吸だけをしていたい。
だからぼくにはやさしくなれる場所がたぶん、必要で、それは本かもしれないし、音楽かもしれないし、コーヒーだったかもしれない、あるいは、あなた。
日常だけが続いていくとしたら、どれだけのやさしさをそのなかに溶かせるか、とばかり考えるのが自然で、特別はいらないよ、と思った。
特別はいらないから、やさしい毎日をそばにおいておきたかった、ぼくだって、やさしくありたかった。

心は簡単に嘘をつくし、ぼくを、裏切る。
ぼくもまた簡単に、心を騙せるから、だからむずかしいね、それでも素直で正直でいたい。
悲しいときは泣きたくなる。
悲しいのは嫌だけれど、悲しさがここから消えてしまうのはきっと、もっと嫌。
それが日常なのだと思うし、ぼくは、普通に生きていたかったのだと思う、それがぼくの普通だった。
53 特別はいらないよ。
ぼくの部屋はとてもやさしいから好きだ。
帰ってきて、やさしくなれるから好きだ。
まっすぐに生きるということは、嘘をつかない、ということなのかもしれない、悲しければ苦しいくらいに泣くし、したいことだけをとことんするような。
ぼくは、まっすぐに生きる。

文と絵 山本こう太

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